運転に関する公安書類について

ICDを植え込まれた方や再発性の失神の既往のあるかたは、運転免許の継続に関して「公安委員会(運転免許センター)」への届け出と診断書提出が必要となります。これは安全な運転に支障がないかを確認するための制度です。ICD患者の自動車運転は、原則として禁止されています。そのため、比較的ご高齢のかたでは、これを機に運転免許を返納するかたもいらっしゃいます。運転を再開するためには、ICD/CRT合同研修セミナーを履修した医師による診断書を、各都道府県の公安委員会または警察署に提出する必要があります。半年に一度の更新が必要となります。

🔸 一次予防と二次予防の違い

  • 一次予防:基礎疾患として心機能低下がある場合など、致死性不整脈の発症を未然に防ぐ目的でのICD植込み
  • 二次予防:既に致死性不整脈を経験した方への再発予防のための植込み

この違いにより、運転できない期間や申請要件が異なります。

🔸 運転禁止期間の目安

  • 新規植込み(二次予防):6ヶ月
  • 新規植込み(一次予防):7日
  • ICD適切作動後(抗頻拍ペーシングを含む):3ヶ月
  • ICD不適切作動後(抗頻拍ペーシングを含む):不適切であることが証明され、失神がなければ運転禁止期間なし
  • ICD交換/リード交換後:7日
  • 中型(8t限定除く)、大型免許、第二種免許:適正なし
  • 🔗 「不整脈に起因する失神例の運転免許取得に関する診断書作成と適性検査施行 の合同検討委員会ステートメント」 改訂のための補遺・3

    ⚠️ 申請しないで運転すると?

    • 運転免許受験時や更新時に虚偽の申告をした場合、道路交通法違反となる可能性があり、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金刑を受けることとなっています(道路交通法第117条の4)。
    • 事故を起こした際、過失責任が重くなる、保険金が支払われないといった不利益が生じる場合もあります。
    • ICD植込み後や失神歴のある方は、「病気の影響で正常な運転に支障が生じる恐れがある状態で、その状態であることを自分でも分かっていながら自動車を運転し、その結果、病気の影響で正常な運転が困難な状態になり、人を死傷させた場合」には「自動車運転死傷処罰法」による厳罰が適用されます。
    • 自動車運転死傷処罰法:人を死亡させたときは15年以下の懲役刑、負傷させたときは12年以下の懲役刑に処する。

      🔗 「道路交通法改正」の概要について

    運転を希望される方は、必ず担当医と相談の上、公安委員会に提出する診断書の作成を依頼してください。

    🔸 医師による公安委員会への任意の届出について

  • 運転を続けたいから、ICDは入れたくないとおっしゃるかたもいます。しかし、ICDが必要と判断されているかたは、「ICDを入れなければ不整脈発作による失神・突然死のリスクがある方への治療がなされていない」ということになります。医師が「運転をするべきではない」と判断しているにも関わらず、診断書を提出せずに運転を続けている場合など、医師は、任意で患者の診断結果を公安委員会に届け出ることができます。やむを得ない場合にはこのような対策を講じる場合があります。
  • 🔗 「道路交通法改正」の概要について

    📄 公安書類の申請手続きと提出先

    1. 医療機関で「運転適性に関する診断書」などの書類作成を依頼
      ※公安委員会指定の診断書様式があります。
    2. 書類が完成したら、最寄りの運転免許センターまたは警察署へ提出
      ※地域によっては一部の警察署では受付できないことがあります。
    3. 公安委員会での審査・確認
      ・運転に支障がないかどうかが判断されます
    4. 結果通知後、必要に応じて免許更新・条件付与・停止解除などが行われます

    ※提出書類や受付場所は都道府県によって異なる場合がありますので、事前にお住まいの地域の
    都道府県警察の公式サイトで確認されることをおすすめします。


    ご不明な点は、病院の相談窓口またはソーシャルワーカーへお気軽にお問い合わせください。